2026.05.20
居酒屋で刺身を頼んだとき、切り口がキラキラと光っていて、角がピンと立っているのを見たことはありませんか。実はあれ、単に見た目がきれいなだけではないんです。刺身の味は、魚の鮮度はもちろんですが、職人がどう包丁を入れるかで驚くほど変わります。
魚の身には繊維があって、その流れを読みながら一気に引き切るのが職人の技です。よく切れる包丁で細胞を壊さずにスッと切ると、舌に触れたときのザラつきがなくなり、魚本来の甘みがダイレクトに伝わるようになります。反対に、何度も包丁を前後に動かして切ってしまうと、断面がガタガタになり、旨味成分である脂が逃げ出してしまうんです。
また、歯ごたえについても、魚の種類によって切り方を変えています。例えば、弾力の強い白身魚は少し薄めに引いて食感を楽しめるようにし、脂の乗った魚は厚めに切ってとろけるような口当たりを強調します。板火のカウンターから包丁さばきを眺めながら、そんなこだわりの違いを感じていただけたら嬉しいです。
「たかが切り方、されど切り方」。職人が魂を込めて引いた一皿は、醤油をちょんとつけるだけで、その違いがきっとわかるはずです。今夜も最高に美味しい状態でお出しできるよう、包丁を研いでお待ちしております。ぜひ、一切れごとの「甘み」と「歯ごたえ」をじっくり味わってみてください。